奈良事件

奈良で、子癇発作を起こした妊婦が危険な状態に陥り、子は帝王切開で助かったが、母は脳出血で死亡した。
その際、主治医の産科医は、自らの病院での治療は無理と判断したのだろう、他の体制の整った病院に搬送しようとするが、18軒に断られ、19軒目に大阪の国立循環器病センターに運ばれた。
これが「事件」と呼ばれるのは、母体を救えなかったことに対して、マスコミが主治医をひどく批判する記事を書いていることによる。

詳細と背景は、ある小児科医の方のブログが参考になるかと。
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20061018
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20061019

初産で亡くなってしまった女性には哀悼の意を表すものでありますが、子供だけでも助かった事に非常に感謝すべき事例かと思います。
にも係らず、医者を責める事は、医者のモチベーションを低下させ、防衛医療に走らせ、ひいては私たち庶民の享受する医療の質が低下することになると思います。

この例のように、専門家ががんばって、それでも不可抗力ともいえる事態で不足の事態になった場合に、専門家を責めるのはやめるべきだと思います。いくら専門家でも、個人の力では、どんな事態にでも対応できるものではないのですから。

奈良事件で言えば、この女性を助けるには、奈良県内に、24時間にわたって医者や看護師や病室やその他人的物的体制を十分すぎるほどにそろえて置き、普通の病院では対応できないような患者はそこに送ればOKというようにするしかないでしょう。要は、バックアップ体制を高める、と。

技術者的見方からすると、そういうのは自明なのに、なぜかマスコミはスケープゴート探し、責任追及にまい進してしまう。